小枝  作:石森

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私は、上を見上げて驚くことになる。

まさかあんなところに、あんなものがあるなんて。

 

 

 

 

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遡ること、数日前。

 

 

会社の窓付近の地面が、

大変汚れていることに気が付いた。

 

 

 

小枝である。

 

いくつもの小枝が地面に散乱しているのだ。

 

 

ホウキを片手によく見てみると、

普通の小枝に混じって可愛らしい黄色い花もある。

 

 

 

 

この小枝たちは一体どこから来たのであろうか。

 

 

最近強風なんて吹いただろうか?

いや、吹いていない。

 

船外機に付着していた海藻だろうか?

いや、海藻ではない。

 

小枝なのだ。

 

 

 

 

この時 私はまだ、

なぜ小枝が大量に落ちているのか分からずにいた。

 

 

 

 

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小枝事件から数日たったある日。

 

 

 

会社周辺を一羽の鳥がうろついているのに気が付いた。

 

その鳥はつぶらな瞳でこちらを見つめながら、

まるで警戒しているかのように『 ピピッ 』と鳴き、

窓付近を何度も飛行していた。 

 

 

またある時は口に何かをくわえ、

またある時はまるで忍者のごとく素早く走り回る。

 

 

 

その姿はまるでジャパニーズ忍者。

 

『 NINJYA BIRD SEKIREI 』

 

そう、その鳥の名はセキレイである。 

 

 

 

 

 

 

そして私は先ほど、

自分が重要なことを口にしたのに気が付いた。

 

『 その鳥は、口に何かをくわえ 』

 

 

その「何か」とは何だったのであろうか?

 

 

 

不覚にも、私は目が悪い。

 

道端に落ちているごみ袋を白猫と見間違え、

「おいでおいで」と言いながら近づいていくような目である。

 

そのような目なので、

果たして セキレイのくわえていた物が、

小枝であったのか何だったのかさっぱり分からずにいた。

 

 

 

……そういえば 

 

会社の敷地内を歩き回るセキレイの姿を

奇遇にもカメラに収めていたのを思い出した。

 

 

 

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工場で撮った写真の中に、

3枚のセキレイの写真があった。

 

 

 

▶ 1枚目

 

何の変哲もない、ただのセキレイである。

 

 

何か言いたげな表情でこちらを見つめている。

『 餌をくれ… 』とでも言っているのだろうか。

 

 

私の家にもセキレイが食パンを貰いにやってくる。

 

 

去る時は『 ピピッ 』と鳴きながら飛んでいく。

なんとも愛くるしい鳥である。

 

 

 

 

▶ 2枚目

 

こちらのセキレイは何かをくわえている。

 

羽…いや、綿だろうか?

 

軽快なステップを踏んで歩くその姿は、

きっと綿を拾って喜んでいるに違いない。

 

 

 

 

 

▶ 3枚目

 

こちらも何かをくわえいるのが分かる。

 

細長い何かに見えるが、もしや…

 

 

小枝だ

 

小枝をくわえている。

 

そして心なしか、

『 小枝を大量に散らかしたのは私です… 』 

と言わんばかりに落ち込んでいるように見える。

 

窓付近に小枝が散乱していたのは、

このセキレイの仕業だったのだ。

 

 

 

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私は外へ飛び出し、 

小枝が散乱していた窓辺へと向かった。

 

今もなお小枝が少量落ちている。

 

 

そして、上を見上げて驚いた。

 

 

 

 

鳥の巣がある

 

 

  

 

それも2つ。

 

   

 

 

地面に落ちていた大量の小枝の謎。

 

それは、セキレイが巣を作るため、

せっせと小枝を運ぶ最中に落としていたものだった。

 

 

ちなみに、

セキレイはメスとオスが一緒に巣作りを行う。

 

2羽で巣作りを行うなんて…

オスはさぞかし子育てにも協力的なのだろう…と思いきや、

子育ては全くせず、主にメスが行うそうだ。

  

イクメンと呼ばれる方もいるだろうが、

なんとも人間らしいと言われている鳥である。

 

 

 

 

そしてまた数日後。

 

落ちている小枝を掃除しながら、

私は上を見上げる。

 

 

……が、もう驚いたりはしない。

 

 

小鳥が顔を出さないか

小鳥の鳴き声が聞こえないか

 

と、わくわくしながら巣を眺めているのであった。

 

 

 

 

~ 完 ~

 

 

 

 

 

( 散らかしてごめんなさい🕊 )

 

 

 

 

本日はこの辺にて。

また次回もよろしくお願いいたします+.゚(*´ω`)b゚+.゚